彼の生きた18世紀はまだ標題音楽の概念が無かったので、第〇番 という表記のみで
後世に渡っても特にタイトルはつけられていないので分かりにくいかもしれませんが
これはCMなどで絶対聴いたことがある曲です。
『アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク』や『フィガロの結婚序曲』など
どちらかというと明るく、華やかな作品が多いイメージのモーツァルトですが
こちらは珍しいト短調の交響曲。生涯で50曲ほどの交響曲を作曲した中で短調の曲は
この25番と40番の2つだけだそうです。
それにしても、
こんな激しくも切ない曲を弱冠17歳にして書き上げるとは・・・
若さゆえなのかもしれませんが・・・溢れ出す凄まじい感性。驚愕です。
天才モーツァルトのきらめく才能の中に混じって実は人間モーツァルトは
心の奥底に深い苦悩をたたえていたのでしょうか。
音楽家でもある父レオポルトは、幼少の頃から息子の天賦の才能を見抜き、
パリ、ロンドン、ローマなどへの演奏旅行を精力的に行い、言わばステージパパとして
売り込んでいたようですが、
天才として期待され、チヤホヤされることへの反骨心の現れかもしれません。
ちなみに晩年(と言ってもモーツァルトは35歳で亡くなっているので全然若いですが)
に発表したもう一つのト短調・交響曲第40番も同じく誰もが聴いたことがある傑作とし
て知られています。30代での作品なので17歳の25番と比べて少しカドが取れた気が
する反面、情念が深まっているように思われます。
『アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク』も
『フィガロの結婚序曲』も
数多のピアノ協奏曲、ピアノソナタも
ありきたりな表現では筆舌に尽くしがたい才能が溢れかえっています。
どっちかというとこちらの方が一般的なモーツァルトの陽の部分。
一方で25番や40番のような陰の部分も併せ持っている。
天才もやはり人間でもそんな陰を表現させてもやはり天才は天才。
ご存知ない方はYouTubeで無数の動画が見つかりますので是非25番や
40番を指定して聴いてみてください。「あ~これもモーツァルトなのか」
と改めてその凄さを知るでしょう。